Masuk決して大きくはないその声に、謁見の間は水を打ったように静かになった。
声の主が、ひらりと私の肩から床へと降り立つ。「あ……貴方は、」
「聞こえなかったか?下がれ、と言ったんだ」あれほどまでに勢いよく詰め寄っていた大神官が、再び発せられたロロの声に、一歩後退った。
すい、とお父様が立ち位置を戻すと、代わりに私の正面に立ったロロは、その小さい身体で堂々と、玉座を仰いだ。(こんなに小さな身体に、こんなにも多くの大人が気圧されるなんて……)
改めて、ロロが神獣なんだということを実感する。
そのまま固まったように沈黙してしまった大神官に代わり、静寂を破ったのは国王陛下だった。「先ほどの声は、貴方か」
静かな問いかけに、ロロは小さく頷く。
「左様。俺の名は、ローエンマイン・ロジェルティア・アルファレア。お前たちが先ほどから話題にしている、神獣だ」
ロロの言葉に、遠巻きにしている大臣たちがざわり、とさざめいた。
国王陛下は、ふむ、と頷いて、席を立つとロロに向かって小さく頭を下げた。周囲の人々も、次々とそれに倣い、一礼する。「神獣ローエンマイン殿。まずはこの、アーヴェルト王国の国王として、挨拶をさせて頂きたい」
「ああ。よろしく頼む」私はといえば、ロロのすぐ後ろで礼をとりながら、内心ハラハラしていた。
神獣は王族と並ぶ権威を持つ――それは理解しているが、ロロの国王への物言いが、どこまで許されるものだかわからないからだ。 幸い、国王陛下はロロの物言いに気を悪くはしていないようで、再び玉座に座り直した後も、柔らかな空気を纏ったままだった。「それで……神獣殿。貴殿が此度、神託にあった神獣ということで、間違いないのだろうか?」
「ああそうだ。俺は、そこの聖女のために、ロザリンデから遣わされた」再び、ざわりと大臣たちが言葉を交わす。
一度は沈黙した大神官が、ぱっと表情を明るくして、何かを言おうと口を開いた――が。「――そう、俺は聖女のためと遣わされた神獣だ。だがな」
大神官を睨み付け、そう続けたロロの言葉の強さに、阻まれた。
「俺は、そこの聖女ではなく……ここにいる、リーエと契約すると決めた」
「な、なな、何を……!!」悲鳴のような声を上げたのは、大神官だった。
先ほどまでより大きくどよめいた大臣たち以上に、飛び上がるほどに動揺した大神官は、駆け寄るようにロロの前まで来るとどさり、とその場に座をついた。 その勢いに、私は思わず後退ってしまう……が、ロロはその場から動かないままだ。「し、神獣様……!な、なぜ、そんな!聖女様の守護について頂くのが、歴史の常では……!」
「歴史などということは知るか。俺は、俺の目で見て決めたのだ」 「そんな、そのようなことがあるはずが……!神獣様は、女神様より聖女のためと遣わされたのでは……」 「ああそうだ。だが、俺が誰と契約するのかは、俺自身の意思が優先される。それは女神も承知している」 「そ、そそそんな……!」 「そもそも、これまでだって神獣が聖女ではないものと契約することは、あったはずだ。そうだろう、国王よ」ロロが大神官の頭上越しに声を掛けると、玉座の国王陛下は静かに頷いた。
「……確かに、神獣殿の言う通りだ。王国の歴史上、聖女以外と契約した神獣の記録も、いくつか残っている」
「ですが!そんな……聖女様がいらっしゃったばかりだというのに、そんな!」頭を抱え、床の上で悶える大神官は、子猫姿のロロに縋らんばかりの勢いで喚き続けている。
困ったように顔を見合わせた国王陛下と女王陛下だったが、やがて女王陛下が頷くと、国王陛下も心を決めたようだった。「神獣殿。重ねての問いとなって申し訳ないが……貴殿は、我が国の聖女アリサとは契約しない、という考えなのだな?それは、変わらないのだろうか?」
「お前たちに都合が悪いのならば、申し訳ない。だがもう、俺はリーエ以外とは契約しないと決めたのだ」 「なるほど。であれば、仕方ありませんな」 「へ、陛下!」うずくまっていた大神官が、裏返った声を上げて玉座を振り返る。
しかし国王は、それに頭を振って応えると、優しい瞳をこちらへと向けた。「わしは、ジュリエッタ令嬢の実の親ではないがな。その子がどれほど優しく、優秀な令嬢であるかは、よくわかっているはずだ。幼い頃から、見てきたからな」
「陛下……」 「神獣殿がジュリエッタ令嬢を選ぶというのならば、それもよいとわしは思う」 「陛下!!」温かな国王陛下の言葉に、じんと胸が温かくなる。
しかし、大神官は立ち上がると、今度は聖女アリサの元へと駆けていき、その椅子の背を握りしめて必死で叫んだ。「陛下、どうかお考え直しを……!聖女様には、神獣様が必要なのです!アリサ様、貴女も何かお言葉を……!」
大神官に言われて、顔を上げた聖女アリサは、目を赤くしてこちらを見た。黒くて大きな瞳は潤み、切なげな表情でロロの方を見つめる。
「私の、猫ちゃん……」
「…………」 「あの、私……聖女としては未熟で。猫ちゃん……神獣様が、いてくれたらって」慰めるように寄り添ったヴォルシングの手を握りながら、アリサがロロに声を掛ける。……しかし。
「……悪いが、お前とは契約しない」
ロロは、そんなアリサにきっぱりと、そう言った。
途端、わああんと再び泣き出すアリサ。 大神官とヴォルシングが必死に宥めに掛かるのを見て、国王は溜め息を吐いた。「それが神獣殿の決定ならば、わしは構わん。他の誰も、反対する者はいないだろう。……それで、ジュリエッタ令嬢。もう契約は済ませたのか?」
「えっと、その……契約はまだです」国王陛下からの問いに、戸惑いながら答えた。
(陛下が認めると言ってくれる前に契約なんて、そんな危ないことできるわけないじゃない……)
国王は、私の考えていることがわかっているのだろう。
ほんの少し苦笑しながら、頷いてくれた。「そうか。もしよければ、この場で契約を済ませてしまうといい。心ない噂が広がるより、大勢の証人がいたほうが良いだろう」
「うむ、それは良い考えだ」国王陛下の言葉に相づちを打ったのは、私ではなくロロだった。
「ロロ……」
「リーエ、契約をしよう」ひょいと飛びついてきたロロを、反射で抱き留める。
美しい宝石のような青い瞳が、至近距離でこちらを見つめてくる。「汝、ジュリエッタ・ユロメアを、我が契約者とする」
低く心地良いロロの声が響くと、ふわりと金色の光が、その小さな身体から溢れだし始めた。どこか温かい――優しい光が、私の身体にも染みこんでくる。
「――リーエ。応えを」
――金色の光を吸収して、反射して。ロロの青い瞳が、幻想的に煌めいて。
目を離せないほどの美しさに、見惚れてしまう。「……はい」
(もう、後戻りなんてできない――)そう、覚悟を持って一言、返事をした。
――その日の朝。
アーヴェルト王国に住む国民たちは、王都の方向の空に、まばゆいほどの金色の光を目撃した。 「王国の端にまで届くほどの美しい光は、ロザリンデ様の祝福だ」――と。 国民の誰もが、その光に祈りを捧げたのだという。 その光は勿論、王都のすぐ隣に位置する、森の中の都市――そこにある、古い神殿の一室からも見えていて。「――あれは……」
深い紫色の瞳を持つ青年が、それを見上げて瞠目していた。
窓から差し込む、きらきらとした陽の光。ふわりとカーテンを揺らす風が、頬を撫でて通り過ぎていく。 マーサの淹れてくれた紅茶も、格別の香りだ。 まさに完璧な朝の風景――の、筈だったのだが。「……ふむ。とても美味しいな」 陽の光がきらきらと反射する、さらりと揺れる黒髪。長い足を持て余すように組んで椅子に座る姿は、社交界の令嬢たちが悲鳴を上げそうなほど様になっている。すうっと切れ長の、女性が嫉妬するような長いまつげに縁取られた目は、煌めく深く青いサファイアがはめ込まれているよう。 一見、人形か何かかと目を疑うほど美しい男性は、優雅にティーカップを傾ける。……私の隣で。(いや……本当に慣れないわ。詐欺よ、詐欺だわ……) じとりとした目で見られていても全く意に介さず、新聞をばさりと広げた彼は、「ほう……?」といたずらっぽく瞳を輝かせた。「リーエ。ほら、ここの記事を見てみろ。――『王国全土を包む黄金の光、女神ロザリンデ様の祝福』だそうだ」 「……はぁ」 「俺たちのことも書かれているぞ。ほら、ここだ――『女神からの祝福、聖女に続き、神獣と契約した公爵令嬢が現れた』。有名人だな、リーエ」 「……あの。ロロ?」 「ん?なんだ?」 あまりにも人に馴染みすぎている神獣様に声を掛ける……と、美青年はこてん、と首を傾げた。 そう――この、私の横で寛ぎまくっているイケメンこそが、『あの』神獣ロロなのだ。「……いえ。なんでもありませんわ」 「そうか」 不思議そうな顔をしながらも、興味深そうに新聞に視線を戻すロロの姿に、私は再び小さく溜め息を吐いた。 新聞でも大きく取り上げられているらしい、王城へと呼ばれたあの日。 まばゆい光の中、私がロロと契約を結ぶと……光が収まった後にその場に立っていたのは、人間の姿になったロロだったのだ。 契約して完全な成獣となったロロは、神聖力を使うことができるようになった。 契約者である私と一緒にいるのに、この人の姿のほうが楽だ――とのことで、すぐに変化を
決して大きくはないその声に、謁見の間は水を打ったように静かになった。 声の主が、ひらりと私の肩から床へと降り立つ。「あ……貴方は、」 「聞こえなかったか?下がれ、と言ったんだ」 あれほどまでに勢いよく詰め寄っていた大神官が、再び発せられたロロの声に、一歩後退った。 すい、とお父様が立ち位置を戻すと、代わりに私の正面に立ったロロは、その小さい身体で堂々と、玉座を仰いだ。(こんなに小さな身体に、こんなにも多くの大人が気圧されるなんて……) 改めて、ロロが神獣なんだということを実感する。 そのまま固まったように沈黙してしまった大神官に代わり、静寂を破ったのは国王陛下だった。「先ほどの声は、貴方か」 静かな問いかけに、ロロは小さく頷く。「左様。俺の名は、ローエンマイン・ロジェルティア・アルファレア。お前たちが先ほどから話題にしている、神獣だ」 ロロの言葉に、遠巻きにしている大臣たちがざわり、とさざめいた。 国王陛下は、ふむ、と頷いて、席を立つとロロに向かって小さく頭を下げた。周囲の人々も、次々とそれに倣い、一礼する。「神獣ローエンマイン殿。まずはこの、アーヴェルト王国の国王として、挨拶をさせて頂きたい」 「ああ。よろしく頼む」 私はといえば、ロロのすぐ後ろで礼をとりながら、内心ハラハラしていた。 神獣は王族と並ぶ権威を持つ――それは理解しているが、ロロの国王への物言いが、どこまで許されるものだかわからないからだ。 幸い、国王陛下はロロの物言いに気を悪くはしていないようで、再び玉座に座り直した後も、柔らかな空気を纏ったままだった。「それで……神獣殿。貴殿が此度、神託にあった神獣ということで、間違いないのだろうか?」 「ああそうだ。俺は、そこの聖女のために、ロザリンデから遣わされた」 再び、ざわりと大臣たちが言葉を交わす。 一度は沈黙した大神官が、ぱっと表情を明るくして、何かを言おうと口を開いた――が。「――そう、俺は聖女のた
「久しぶりだな、ジュリエッタ令嬢」 「はい。ご無沙汰しております、陛下」 国王陛下は、優しい表情でうんうんと頷いてくれた。 私は、幼い時から第二王子ヴォルシングの婚約者だった。必然的に、国王陛下や王妃様に会う機会もとても多く、優秀な子だと、大変可愛がってもらっていたのだ。 ――異世界から、聖女がやってくるまでは。 しかし、婚約を破棄しても、陛下や王妃様から嫌われているわけではない。 今回も、話すら聞かず私に罪を問うような空気ではないことを感じて、私はほっとした。「本当に、元気に過ごしているようでよかった。こんな朝早くから呼び立てて悪かったな。実は、今朝早く、神殿に神託が下ったのだ」 「神託、でございますか」 「ああ。内容の説明は、同席させている大神官からさせよう」 陛下がすっとアリサの後ろへと視線を向ける。それを受けて咳払いしたのは、初老の男だった。 ずるりと床を引きずるような、真っ白に金の縁取りがなされた神官服。袖の部分に3本のラインが入っているのは、大神官である証だ。 その男は衣擦れの音をさせながらアリサの前へと進み出ると、厳しい目で私を睨み付けた。大神官には、あまり良く思われていないらしい。「……あー、えっほん。私は、この首都にあるロザリンデ教、主教会の大神官を務めている、ラニエルと申します。本日の日の出の頃、我が神殿の祭壇へと、神の御言葉がおりたもうたため、急ぎ国王陛下へと報告をいたしました」 丁寧に前置きをして、大神官は丁寧に頭を下げた。不機嫌な顔はそのままだが、きちんと礼儀はなっている人物のようだ。「それで、ロザリンデ様は仰られたのです。我が忠実なる遣いを、地に与えたもうた。聖女と共に、この国に繁栄をもたらせるだろう――と」 神の神託を朗々と告げると、胸元のロザリンデ像をかたどったネックレスを握りしめ、大神官は口早に祈りの言葉を呟いた。 ――女神ロザリンデ。このアーヴェルト王国において、王国の繁栄を約束し、豊かな実りと平和を授けてくれると言われている、女神だ。 この国に現れる異世界からの
茶番というか、見世物というか。 すさまじい泣きっぷりを披露しているアリサの次に、玄関口から飛び出してきたのは、第二王子その人だった。 ……私の幼馴染みであり、元婚約者であり……そして現在、聖女アリサの婚約者である、ヴォルシング・アーヴェルトだ。 私よりもふたつ年下の彼は、赤みがかったくすんだ金髪に、王家に伝わる紫の瞳をした、少年らしさの残る、可愛らしい美丈夫だ。年下のくせに、身長ばかりぐんぐんと伸びて、今では私の兄様方と変わらないくらいの長身になっている。 そういえば、会うのは婚約破棄をして以来だったな、と、ぼんやり思った。 彼はわんわん泣くアリサと、そしてドン引きしているこちらを順に確認して、アリサの横を通り過ぎた。「ヴォルグ様ぁ!」 「少し待て、アリサ」 縋るようにヴォルシングのズボンに手を伸ばしたアリサは、彼の静かな言葉に途端に喚くのをぴたりとやめる。 すすり泣くアリサを背後に、ヴォルシングはお父様の目の前まで行くと、小さく頭を下げた。「ユロメア卿。すまない、出迎えが遅れたな。……それから、その、少し……騒がしくしてしまって」 「ご機嫌よう、殿下。……そちらの聖女様のことは、よろしいのですか?」 決まり悪そうにしているヴォルシングへ、お父様がしっかりと頭を下げつつ尋ねる。怒ると言うより、呆れているような口ぶりに、ヴォルシングはそっと肩を竦めた。「俺は王族として、貴殿を出迎えに来たのだ。挨拶が先だろう」 「仰る通りですな」 ヴォルシングは、次に兄様たちへと会釈をして――最後に、私へと向き直った。 声を掛けられる前に、と――私はすっと、ドレスの端を摘まんで広げ、身体を沈ませる。「……久しぶりだな、ジュリエッタ……いや、ユロメア公爵令嬢」 婚約者でなくなった以上、今まで通り、互いを名前で呼び合うことも失礼なことだ。(ヴォルグは、しっかりしていて助かったわ) 「はい。お久しぶりでございます、殿下」 返事をして姿勢を戻す。と――ヴォルシングは、何とも言えな
ほんの僅か、白髪の交ざる髪を乱して、ついでに衣服もヨレヨレというものすごい外見で、お父様が素早く部屋の中を見渡し――。 やがてその視線は私と、私の膝でくつろいでいるローエンマイン様の姿を確認した。途端、音が聞こえるんじゃないかという勢いで、お父様の顔色が真っ青になった。「なんということだ……。いや、まさか、そんな……」 「お父様、どうなさったのですか?」 手で顔を覆い、がっくりと肩を落としたお父様の姿に、嫌な予感がする。(ただでさえ、ローエンマイン様から契約を迫られて困ってるっていうのに……また何か、厄介ごとでも起きたっていうの?) あまりにもショックを受けたお父様の姿に、お母様が立ち上がり、そっと寄り添った。「……あなた。何がありましたの?」 「……ああ。そうだな。すぐに出発しないといけないんだ」 「まぁ、どちらへ?」 多少冷静さを取り戻したらしいお父様が、お母様の手を握り、やっと顔を上げる。 その表情はとても、困り切っているように見えた。「説明は馬車の中でするから。ジュリエッタ、すぐに出掛ける準備を。……その、『膝の上の御方』も、お連れしなさい」 ……どうやら、私の悪い予感は的中したようだった。 お父様が、何か話を聞く前に、私の膝の上のローエンマイン様を、『膝の上の御方』と呼んだ。それだけで十分だ。「わかりました。すぐに王宮へ向かう準備を致します」 そう返事をして、ローエンマイン様を抱えて早足で自室へ戻る。 身支度を調えて屋敷からでると、玄関口には既に、正装に着替えたお父様とお兄様たちが揃っていた。お母様は、屋敷に残るらしい。 見送り際、お母様は私をぎゅ、と抱きしめて、ローエンマイン様にはそっと頭を下げた。「神獣様。娘を、どうかよろしくお願いいたします」 「案ずるな。ジュリエッタのことは、必ず守る」 馬車はいつもより速い速度で、王宮へと走りだした。私の隣にお父様が座り、向かいにはお兄様たちが座っている。 いつもより少しガタガタと
「……と、いうわけですの」 「…………」 翌日。 私は談話室にて、お母様とお兄様たちを前にして、冷や汗を流していた。 半ば尋問のような雰囲気の中、ローエンマイン様についての全てを説明し終えた私に、沈黙が重くのしかかる。 こんなことになったのは全て、今私の膝で満足そうに丸くなって喉を鳴らしている、ローエンマイン様のせいだった。 結局、一晩中契約を迫られ、断り続け……そんなことを続けている間に朝になり、私の様子を見に来たお母様に対して、あろうことかローエンマイン様がしゃべったのだ。「……む? ジュリエッタの母君か。世話になっている」――と。 当然、お母様は驚き、猫がしゃべったと悲鳴を上げ、それを聞いてお兄様たちがばたばたと駆けつけてくる騒ぎとなり……。 あれよあれよという間に、朝食を兼ねた軽食が並べられたこの談話室にて、取り調べが始まったのだった。(もう……どうしてこんな目にー) 嘆いたところで、ローエンマイン様が神獣であることには変わりない。 彼を助けると決めたのは私なのだから、責任を取らないといけない、とも思っている。 でも……。 ちら、と、正面に座るお母様たちの顔色を窺う。 お兄様――上のお兄様が深い溜息を吐いたのは、その時だった。「――ひとまず、事情はわかった」 「アルト兄様……」 上の兄――長男アルト・ユロメアは、私と同じハニーブロンドに新緑色の瞳の美男子だ。 頭脳明晰なお父様の部下として、また王城にて政治に関わる出世頭として、社交界でも人気の独身男性。 そんな完璧人間の長兄に続いて、下の兄――次男ウォルター・ユロメアが、静かに頷いた。「やはり、リーエは天使のように優しいのだな。さすが俺の妹だ」 「ウォルター兄様……!」 「なんだリーエ。俺は間違ったことは言っていない」 ウォルター兄様は、新緑色の瞳に、お父様譲りの短い茶髪をツンツンさせている。こちらももちろん、アルト兄様と別タイプの美男子として有名だ。







